様々な脱毛症 女性の薄毛の原因
女性の薄毛の原因とは
近年、女性の薄毛のご相談がたいへん増えております。女性の薄毛の原因は主に加齢による女性ホルモンの減少、ストレス等によるホルモンバランスの乱れ、間違った頭皮ケア、などが挙げられます。このほかに、「生まれつき猫っ毛で髪が細い」、「両親も薄毛で遺伝した」などの要因もあります。
髪の毛にはヘアサイクル(毛周期)というものがあり、髪の毛は日々作られ、それと同時に寿命を終えた髪の毛は抜けていきます。ヘアサイクルは、毛が生え始めてから毛母細胞がさかんに分化・増殖し、その成長が止まるまでの時期を指す「成長期」(一般的に2~6年の周期)、成長期が終わって休止期に移行する過程である「退行期」(1~2週間)、毛根が退化してから毛が抜ける直前までの「休止期」(3~4カ月)というサイクルのことをいいます。この毛周期は男性と女性で少し違いがありますが、女性の場合は4~6年、一生のうちに15~30 回くらいのヘアサイクルを繰り返すと言われています。
前述の要因で成長期が短縮したり、ヘアサイクルが乱れたりすると薄毛が進行します。
一度乱れてしまったヘアサイクルは自然に戻ることは稀で、元に戻すためには専門的な治療が必要となります。
女性の薄毛治療は近年の治療効果はめざましいものがあります。一昔前まで女性の薄毛の要因は「加齢」「ストレス」と片付かれていましたが、現在は様々な病因が解明されてきました。当院では、専門医が丁寧な診察をしたうえで、医学的根拠に基づいて、患者様の年齢や髪の状態に合わせたオーダーメイドの治療を行うことが大切と考えています。
正常なヘアサイクル

脱毛症によって乱れたヘアサイクル

女性男性型脱毛症(FAGA)
女性男性型脱毛症(FAGA)とは
薄毛に悩む女性のじつに半数が「FAGA(女性男性型脱毛症)」です。これは、主に生え際から頭頂部にかけて抜け毛が増え、同時に毛髪が軟毛化することによって地肌が透けて見えるようになる脱毛症です。最初は太い毛が抜け始め、徐々に細く弱々しい毛が抜けるようになるという症状は、男性に最も多いAGA(男性型脱毛症)と似ています。
しかし、額の生え際がM字型に後退したり、頭頂部の髪がすべて抜けてしまったりする 男性のAGAの症状とは異なり、最終的にすべての毛が抜け落ちて、つるつるの状態になることはありません。女性の場合は毛髪が細くなり、多くの場合、生え際から頭頂部の範 囲の髪がまばらになって密度が減少した状態となります。
また、特定の部位ではなく、全体的に脱毛症が進むこともよくあります。後ほどご説明 する慢性休止期脱毛症と区別がつかないこともあるため、拡大鏡による検査を行うことが 重要です。
FAGAは40代から発症する割合が多く、高齢の方に多く現れますが、なかには20代の患者様もいます。これは、加齢とともに女性ホルモンが低下するうえ、更年期によってさらに女性ホルモンの分泌が減少することで、相対的に男性ホルモンが過剰・優位となるために発症すると考えられています。
ただし、血中の男性ホルモン値が高いわけではなく、男性と違ってⅡ型5αリダクターゼ酵素が多いわけでもありません。このあたりがFAGAの治療を難しくしている要因といえます。

女性男性型脱毛症(FAGA)の特徴

女性男性型脱毛症(FAGA)の状態
- 主に頭頂部の軟毛化を伴う密度低下が起こる。
- 前頭部の軟毛化を伴う後退や、角額(いわゆる〝そりこみ〟部分)の後退を生じることもある。
- 男性のAGAと異なり、頭頂部のみ薄毛が進行し、生え際は保たれることも多い。
- 30代前半に気づく場合が多い。
女性男性型脱毛症(FAGA)の原因
FAGAの原因は加齢に伴う女性ホルモンの減少による男性ホルモンの優位にあります。 しかし、中には男性のAGAと同様に 代で発症するケースもあります。さらに思春期の男女が発症するAGAやFAGAもあり、「premature alopecia(超早期脱毛症)」と呼ばれます。一方、祖父、父親の男系親族に薄毛の人がいると、発症しやすいともいわれています。
女性男性型脱毛症(FAGA)の治療
FAGA(女性男性型脱毛症)には下記の治療が有効です。
慢性休止期脱毛症
慢性休止期脱毛症とは
「慢性休止期脱毛症」とは、頭部全体の毛髪が薄くなる女性特有の脱毛症です。 頭部の広い範囲にわたって症状が現れることと、FAGAと異なり軟毛化していないことが特徴です。
これは本来10%程度であるべき休止期状態にある毛(休止期毛)が20%ほどに増えることで起こります。
症状としては、抜け毛の増加に始まって、 頭髪全体のボリューム感が減少し、地肌が透けて見えたりするようになります。
慢性休止期脱毛症の特徴

慢性休止期脱毛症の状態
- FAGAのように短い軟毛が抜けるのではなく、長い硬毛が抜ける。
- FAGAと異なり頭部全体から脱毛する。
- 通常、生え際の後退や軟毛化はない。
- 特定部位ではなく、頭部全体で薄毛が進行する。
- 易抜毛性(髪が抜けやすい、切れやすい)はない。
慢性休止期脱毛症の原因
慢性休止期脱毛症には特定の要因がなく、根本的に一番影響を与えている原因が何かと いうことは現在も解明されていません。原因不明な場合が多いですが、次のようなものが 要因となることもあります。
- 精神的ストレス、疲労
- 過度のダイエット
- 加齢
- 甲状腺疾患
- 貧血
- 亜鉛欠乏
- 常備薬による副作用
慢性休止期脱毛症の治療
慢性休止期脱毛症には下記の治療が有効です。
びまん性脱毛症
円形脱毛症
円形脱毛症とは
「円形脱毛症」は、成長期毛の毛球部に何らかの激しい炎症が起こり、毛母細胞が同時に 死滅するために発症します。ただ、毛包の再生にとって最も重要な毛包幹細胞のあるバル ジ領域は障害されませんので、炎症が治まれば毛母細胞も再生、回復します。
円形脱毛症には単発型、多発型、全頭型、汎発型など、いくつかの種類があり、症状の 出方にも個人差があります。
俗にいう〝10円ハゲ〟は「単発型」ですが、それが複数できる場合は「多発型」となり、その範囲が広がって、すべてつながってしまうと「全頭型」となります。
円形脱毛症は、ほかの脱毛症と比べると進行の速度が速く、病的な抜け方をするのも特徴です。髪はまばらに薄くなるのではなく、発症部位はすべて抜けてしまいます。円形脱毛症は自己免疫疾患によるもので、精神的ストレスや薬剤によるアレルギー、ウイルス感染、頭皮疾患などを原因として、毛包由来の自己抗原をターゲットにした自己免疫反応が誘発されます。ただし、幼児期に発症するケースもあるため、一概にストレスなどによるものと断定することはできません。
なお、アトピー体質を持っている人に起こりやすいこともあり、アトピー性皮膚炎と円形脱毛症には密接な関係があると考えられています。
円形脱毛症の患者分布は30歳以下で発症する割合が80%、特に15歳以下で発症する割合が全体の4分の1と、若い世代に多いの特徴です。
円形脱毛症の特徴

円形脱毛症
- 脱毛斑が円形、または楕円形であり、境界が比較的はっきりしている。
- 抜けた髪の毛の毛根部分が、細くとがった状態になる。
- 脱毛斑の周囲の毛を引っ張ると簡単に抜け、痛みもほとんどない
(易脱毛性)
円形脱毛症の原因
精神的ストレスが引き金になることが多く、遺伝的な要因もありますが、多くの場合は原因不明です。
円形脱毛症の治療
当院では円形脱毛症の治療も専門的に行っております。円形脱毛症の治療は 専用ページ をご覧ください。
分娩後脱毛症
分娩後脱毛症とは
「分娩後脱毛症」とは、分娩後2~3カ月以内に生じる脱毛症で、慢性休止期脱毛症と同じような症状が現れます。
妊娠後期には、エストロゲンが増加する影響で毛周期の成長期が長くなり、退行期に移行しなくなります。ところが、分娩後は2~3カ月でエストロゲンの量が元に戻り、ヘアサイクルも成長期から急速に休止期に移行します。それまでの成長期でたくさん生えた髪が休止期に入り、一気に抜けてしまうのです。
もともと抜けるはずの髪の毛が抜けるべきときに抜けず、長い成長期を経たあとにまとまって抜けるため、一時的に見た目も薄く感じてしまいます。
症状としては、抜け毛の増加から頭髪全体のボリューム感の減少、地肌が透けて見えるような状態などがあります。また、前頭部の生え際から後退していくこともあります。
なお、ピルを飲んでいる女性が服用を中止すると、同様に抜け毛が目立つようになることがあります。ピルは女性ホルモンのエストロゲンを補給する薬なので、服用をやめると、分娩後脱毛症と同様、エストロゲンが減って一気に抜け毛が増えるのです。しかし、これは一時的なもので元に戻るので、心配はいりません。
分娩後脱毛症の特徴
- 分娩後、急激に抜け毛の量が増える。
- 硬く、しっかりとした硬毛が抜ける。
- 通常は分娩後6カ月ほどで正常に回復する。
分娩後脱毛症の原因
妊娠による一時的なエストロゲンの増加と、出産による女性ホルモンの急減
分娩後脱毛症の治療
分娩後脱毛症は多くの場合、無治療で自然に回復します。ただ回復に時間を要している場合は下記の治療を併用すると、早期に回復することが期待できます。
脂漏性脱毛症
脂漏性脱毛症とは
「脂漏性脱毛症」は、皮脂腺の炎症(脂漏性皮膚炎)などが原因で起こる脱毛症です。頭皮に湿疹や、強いかゆみ、痛みがあり、ふけが多いのが特徴です。
何らかの原因により皮脂腺に過剰に皮脂が分泌され、皮脂が毛穴をふさぐことで、毛穴周辺部や毛根が炎症を起こすものです。皮脂でふさがれた毛穴の内部で雑菌などが繁殖し、 毛根にダメージを与えて毛髪を抜けさせてしまいます。
通常、多少の皮脂で髪の毛が抜けることはないので、脂漏性皮膚炎による脱毛は相当に重い状態といえます。また、脱毛の症状が出る頃には湿疹やかゆみは強くなっている場合が多くなります。まずは脱毛の症状が始まる前に、治療によって脂漏性皮膚炎を改善することが重要です。
脂漏性脱毛症の特徴
- 抜け毛が起こる前に、頭皮に強い炎症が出る。
- 強いかゆみ、痛みがある。
- ふけが多く出る。
- 頭皮に赤みがある。
脂漏性脱毛症の原因
- ホルモンバランスの乱れ
- 間違った頭皮ケア
- ヘアワックス、スプレーの多量使用
- シャンプーのしすぎや、すすぎ残し
- 食生活の乱れ
- 睡眠不足
脂漏性脱毛症の治療
脂漏性脱毛症には下記の治療が有効です。
牽引性脱毛症・圧迫性脱毛症
牽引性脱毛症・圧迫性脱毛症とは
「牽引性脱毛症・圧迫性脱毛症」とは、ポニーテールなど髪を結ぶヘアスタイルや、ヘアピン、カツラなどの物理的な力によって、毛が引き抜かれたり、毛幹が破壊されたりして起こる脱毛症です。常に同じ分け目にしたりすることも牽引性脱毛症を引き起こすことがあります。長年、同じヘアスタイルや髪の分け方をしていて、常に同じ部位に負荷がかかっている状態が続くと、髪の毛が切れたり、弱ったりしてしまいます。それによって地肌が透けて 見えたり、局所的に髪の密度が減ってしまったりするのです。
そこで、いつも同じヘアスタイルにするのではなく、髪の毛を結ばずに下ろしたり、分け目を変えてみたりすることも対策のひとつになります。
牽引性脱毛症・圧迫性脱毛症の特徴
- 髪の分け目の地肌が見えやすくなる。
- ポニーテールなど髪の毛を束ねて結んでいる部分の密度が減ってくる。
- 切れ毛、枝毛が目立つ。
- 易脱毛性ではない(引き抜きテストで簡単に抜けない)。
牽引性脱毛症・圧迫性脱毛症の原因
長年、髪の分け目を変えていない。ポニーテールなどによって毛幹部分への外的負荷がかかっている。
牽引性脱毛症・圧迫性脱毛症の治療
牽引性脱毛症・圧迫性脱毛症は多くの場合、髪の毛を結ばずに下ろしたり、分け目を変えてみたりすることで自然に回復します。ただ回復に時間を要している場合は下記の治療を併用すると、早期に回復することが期待できます。
薬剤性脱毛症
薬剤性脱毛症とは
「薬剤性脱毛症」とは、薬の副作用で起こり得る脱毛症で、「成長期脱毛」と「休止期脱毛」に分類されます。
成長期脱毛
「成長期脱毛」を起こす薬剤は抗がん剤です。抗がん剤は、細胞の細胞分裂を妨げる働きを持っています。しかし、がん細胞だけを標的にできない場合が多く、同時に体の他の細胞や毛根(毛母細胞)に対しても同じように細胞分裂を妨げ、作用してしまいます。そのため副作用として脱毛症を発症するのです。
そもそも毛母細胞は、体の他の細胞と比べて最も活発に細胞分裂をする細胞のひとつです。そのため抗がん剤の影響を受けやすく、細胞死(アポトーシス)を起こしてしまい、 脱毛が生じるわけです。
抗がん剤の副作用によって脱毛しても、薬の投与終了後には髪は速やかに再生されます。
休止期脱毛
「休止期脱毛」は、薬の影響で休止期の髪の毛の割合が増えたり、成長期の期間が短くなったりするものです。「休止期脱毛」を引き起こす薬剤は非常にたくさんあり、代表的なものとしては、ワーファリンやインターフェロン製剤などです。
こうした薬剤の場合、投与してから脱毛が始まるまでに長い期間がかかることが多く、 そのために原因となった薬剤を見つけることが難しいのが特徴です。ただし、その薬の投与が終了すれば脱毛は治まります。
休止期脱毛を起こし得る薬剤 |
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薬剤の種類 | 成分(一般名) |
ヘルペス治療薬 | アシクロビルなど |
痛風治療薬 | コルヒチン、アロプリノールなど |
消炎鎮痛剤(痛み止め) | イブプロフェン、インドメタシン、ジクロフェナクなど |
高脂血症治療薬 | シンバスタチン、アトルバスタチン、ベザフィブラートなど |
降圧薬 | ドキサゾシン、アムロジピン、ベタキソロール、エナラプリルなど |
うつ病治療剤 | イミプラミン、メチルフェニデート |
胃薬 | ランソプラゾール、オメプラゾール、ラニチジンなど |
経口血糖降下剤 | グリベンクラミド、グリクラジド、ボグリボースなど |
骨粗鬆症治療薬 | エチドロン酸ニナトリウム |
抗真菌剤 | フルコナゾール、イトラコナゾール、テルビナフィンなど |
インターフェロン製剤 | IFNα、IFNβ、IFNy |
食欲抑制剤 | マジンドール |
アレルギー性疾患治療剤 | トラニラスト、テルフェナジン、エバスチン |
血液凝固阻止剤 | ヘパリン、ワーファリン |
子宮内膜症治療剤 | ダナゾール |
抗結核剤 | エチオナミド、エタンブトール |
抗甲状腺剤 | プロピルチオウラシル、チアマゾール |
薬剤性脱毛症の治療
薬剤性脱毛症は多くの場合、原因となっている薬を中止すれば自然に回復します。ただ回復に時間を要している場合は下記の治療を併用すると、早期に回復することが期待できます。